「プリザーブドフラワー」などという言葉はおろか、それが何なのかすら知らない、
アラフィフ女性の私のところへ一本のバラが届いた。
ある化粧品メーカーからの、ささやかな誕生日プレゼントである。
白い箱に収められたピンク色のバラには、赤いリボンが施され、バラの花びらには
「Happy Birthday」の文字が。
箱から出して、花瓶にいけようとしたら、娘に制止された。
「それって、プリザーブドフラワーでしょう。いいのよ、そのまま飾っておけば」と
言われ、「プリザーブドフラワーって何?」
と尋ねたら、大きなため息をついたあと、次のように説明してくれた。
新鮮な生花を脱色液や着色液につけ乾燥させて処理したもの。
生花だと、枯れてしまったり、アレルギーの心配があったりするが、こうして処理す
ると、その心配がなく、
見た目も生花と比べて見劣りしない、質感と柔らかさがあって、造花やドライフラ
ワーとは全く違うのだそうだ。
確かに、見た目は、普通のバラと変わらない。
そもそも、この状態で、生花を送ってきたのなら、ついた時点ですでに枯れてしまっ
ているはずである。
なるほど、世の中は、こういうことになっているのだなと、改めて、自分の無知を痛
感した。
その夜、帰宅した夫にそのことを話すと、さすがに、プリザーブドフラワーのことは
知っており、仕事で利用することもあるのだそう。
しかし、夫自身は、あまりこの花が好きではないようだ。その理由を次のように話し
てくれた。
「なんだか、生花は、20代の女の子みたいだけど、プリザーブドフラワーは、50代の
おばさんが厚化粧して若作りしてるみたいじゃないか」と。
帰宅早々、喧嘩をうっているのかとも思ったが、よくよく考えてみるとそうかもしれ
ない。
実際なら、枯れて衰えているはずの花を、無理やり美しく保たせているのだから。
夫の言葉を聞いて、改めて、もらったプリザーブドフラワーを眺めてみた。
心なしか、元気がなさそうにみえる。生花に比べると、つやのない花びらが、はじめ
てみた時より一層際立って見える。
美しいけど、なんだか悲しい、そう思ってしまうのは私だけではないはずだ。
月並みな言葉ではあるが、やっぱり自然が一番、そう思ってしまった、今回の出来事
であった。